まともにするとまともにならない。選挙制度の話
日本は民主主義の国であり、民主主義は国民の「民意」を反映させる政治制度だ。しかし、この「民意」の汲み取り方が選挙制度1つで著しく異なってくる。今回は小選挙区と比例代表の違いの話と二院制の話をしたい。
比例代表はもっとも民主的な選挙制度だ。ただし、結果を除いて
比例代表は最も忠実に国民の意見を反映できる選挙制度だ。例えばある国では100人の議員で構成される国会があり、全て比例代表で選ばれたとする。そうすると議席の配分は単純明快だ。国民の50%が支持する政党が50議席、20%の支持がある政党は20議席、5%の支持があれば5議席・・・と国民の支持率が議席に直結する。これが小選挙区(選挙区で1人しか当選できないシステム)だとこのようにはならない。全ての選挙区で支持率が51%対49%の政党の争いであるなら議席の結果は100議席対0議席になる。もちろん比例代表であれば51議席対49議席だ。やはり比例代表は民主的だ。
アルファブロガーの子飼弾は民主党が次の選挙までにやっておくべきことで一票格差から比例代表がもっとも民主的な制度で、参議院は比例のみにしたらいいと言っている。確かに比例代表は民主的でよいシステムなのだが、重大な欠陥をはらんでいる。それは小党分裂である。
ドイツでは第一次世界大戦の後、史上もっとも民主的であるワイマール憲法が作られた。その下での選挙制度は比例代表によるものだった。しかしそれによって小党分裂が起こり、政治停滞をもたらし、うんざりした国民が合法的な手続きによってヒトラーを総統に選出した。つまり、もっとも民主的な制度から最も非民主的な独裁者が誕生した事実がある。
今回の選挙でもわかる比例代表の危険
そんな歴史を紐解かなくとも、今回の選挙を比例代表のみの結果で検証*1してみた。そして議席(全480議席)に反映させると以下の通り。
- 自民 得票率27% 131議席
- 民主 得票率43% 208議席
- 公明 得票率11% 53議席
- 共産 得票率7% 35議席
- 社民 得票率4% 21議席
- 国民新 得票率2% 10議席
- みんな 得票率4% 21議席
そう、驚くべきことに、民主の大旋風が吹き荒れた今回の選挙ですら民主党は過半数を取れていないのだ。これでもし自民・公明がもともと同じ穴のムジナである国民新、みんなを取り込むと、民主連合・自民連合ともに過半数を取れずに共産党の動向によって政権が決まってしまう。これが比例によって起こる小党分裂だ。