ローマに学ぶこと:外国人を国力にする方法

かつて米国留学から帰朝したした友人が「アメリカの強さというのは、世界中から優秀な人材を集めてアメリカのために働かせてしまうことだ」と留学の感想を述べた。自分的にこの話は衝撃的で、すっかりそれ以来この意見の信奉者になってしまった。確かにアメリカに留学から帰ってきた友人でアメリカ嫌いになった人を見たことがないし、インド人や中国人が留学した後、そのまま米国に留まって起業したり就業したりすることからも、「アメリカに行くとアメリカ好きになる」というそれは感じ取れる。
米国では最近、学位の取る人の割合が非アメリカ人に増えている事が問題となっているようだが、むしろそれは世界中から優秀な人材を集めている証拠であって、今まで通り彼らをそのままアメリカのために能力を使わせることができるのなら、なんら問題ではない。
そんなことを思っていたのだが、ふと今日、塩野七生の『ローマ人の物語』の文中からローマも全く同じ戦術を使っていた事に気付いた。以下引用。

百人の人質をローマに送る件も、これは以後もローマ人がよく使う手なのだが、行ってみれば、好きな時に帰国できないという制約はあっても、フルブライトの留学生と同じようなものである。年齢を若く抑えているのもそのためだ。ローマは、旧敵国の指導層の子弟、つまり旧敵国の指導層予備軍を選んでローマで学ばせ、ローマのシンパに育てるやり方を好んだ。人質と言っても、牢獄に繋がれるわけではない。適当な家庭に預けられ、家族同様に扱われ、その家の子供たちと一緒にその家の家庭教師に学ぶのが、ローマ人の考える人質であったのだ。
塩野七生ローマ人の物語 ハンニバル戦記 下』86頁

つまりローマの方法は他国から留学生を受け入れて、彼を本国帰国後にローマ寄りの政治をさせようという腹だ。近年、日本もMBAが政財界で流行っているが、多くのMBAアメリカで取得する。そしてなんかMBAホールダーってアメリカかぶれが多いじゃない。こうやって日本の上層部のアメリカ好きは育っていくんですね。まるっきりローマ戦術にハマってる日本である。
さらに、ローマの強さは外国人を登用する力にもある。アメリカが優秀な留学生をそのままアメリカで就業させる環境と似ている。

自立した市民の数が多ければ多いほど、その国は強く、農耕地の手入れもゆき届いて豊かになる。ギリシアの現状は、これから最も遠いところにある。
反対に、自由な社会のあり方を進めているローマを見るがよい。あの国では、奴隷さえも社会の構成員だ。何かあるとすぐ、彼らにさえ市民権を与える。市民にしてやるだけでなく、公職にさえ就かせる。立派なローマ市民だと思って対していると、一代前は奴隷であったなどということは始終だ。
塩野七生ローマ人の物語 ハンニバル戦記 下』114頁

思えば日本となんとこの力が弱いのだろうか。ただでさえ能力のある人に対してのやっかみが激しいが、それが外国人となったらさらに激しい。アメリカで例えるならば、カリフォルニア知事のシュワちゃんオーストリアから、グーグルの創業者も一人はロシアから渡ってきた。いずれも実力でのし上がった成功者だ。しかし、もし日本であったら彼らが成功を収めているだろうか?私は到底思えない。日本でグーグルを立ち上げたとしてもおそらく資金調達すらできないだろう。移民のマッチョが知事選にでても泡沫候補だ。あ、大阪なら当選するかもしれん。まあとりあえず、日本でこの手の成功者と言えばソフトブレーン宋文洲くらいだろうか。
日本の人口減少を見るに、遅かれ早かれ外国人の受け入れ(それも大幅な受け入れ)は必須となるだろう。どうせ受け入れるなら早めに考えた方がいい。外国人の参政権や労働者の受け入れの議論は感情的な話が多すぎる。中国人が日本に来てあふれたら危険だ、という見方をするよりも、中国人が溢れるほど日本に来て日本のために働いてもらうと考えれば、お互いハッピーなのではないだろうか。ローマもアメリカも、外国人が大きく国益に貢献していることは間違いない。外国人を排斥するのではなくて、外国人に働いてもらうくらいの意識を持った方がよいと思うのだがどうだろうか。