全員一致の決議は無効

イザヤ・ベンダサン日本人とユダヤ人 (角川文庫ソフィア)』から。『日本人とユダヤ人』はユダヤ人の著者が日本の習慣や価値観などを(皮肉をこめて)解説する内容である。なお現在では著者は山本七平であるとわかっている。
本書で紹介したいのは、ユダヤの法では「全員一致の決議は無効」という話である。なぜ全員一致の決議が無効になるかといえば、全員一致の決議とは、外部から強い圧力がかかっているか、あるいは熱狂の中にいて勢いで決めてしまっているかのいずれかであるということだ*1。前者の場合は決議は無効、後者の場合は翌日もう一度決議をとる、というルールである。
たしかに自分の経験でもなにか決めるための相談をしている時に、ぱっと誰かがいいアイディアを言うとそれまでの沈滞ムードから一転、「いいねいいね」「それそれ」みたいな感じで決定、しかしいざ実行段階で「???」と思うことがある。今回の総選挙も同じで、「政権交代」「自民党に懲罰」とか言ってた癖に、結果が出てから(そして一晩たってから)「あれ、ちょっと不安かも」「これでよかったんか」というような雰囲気になってるように思う(かくいう自分がそうだ)。熱狂の渦にいると冷静な判断はできないし、そもそも熱狂の中にいるという事すら気付かない。
これを見るにやはり人間のもつ「予見能力」ってのは欠陥があるのだなと。だからこれを前提に仕組みを作るのはいいことで、ユダヤの法*2は優れている。そういう意味で二院制ってのも優れていて、選ばれる人は上院と下院でほとんど同じような人であるが、選出された時期が違うために時間的な差でダブルチェックが出来ている。特に日本人はその場の雰囲気で一方に傾きやすいので、参院という時間軸での議席調節機関は必要であるように思う。ただ今回の内閣人事、その「参議院での過半数をとるため」に国民新の亀井、社民の福島を入閣させるのは大きすぎる代償かもしれないが。

*1:なお山本は一方で日本においては全員一致が前提とされ、たとえ全員一致でなくとも全員一致の体をとると指摘している。

*2:山本七平の事実誤認で実際には全員一致は無効ってのはないとの指摘もあるらしい。ソースはウィキペディア